• トップページ
  • 波の伊八の最高傑作「天狗と牛若丸」 飯縄寺(いづなでら) 千葉県いすみ市

波の伊八の最高傑作「天狗と牛若丸」 飯縄寺(いづなでら) 千葉県いすみ市

見出し画像
画像1

別名「天狗の寺」と呼ばれる千葉県いすみ市「飯縄寺」

建造物のすべてが江戸時代に建てられた、江戸情緒がたっぷりと感じられるお寺です。

飯縄寺には、千葉県鴨川市出身「初代波の伊八」作品が多数遺され、中でも欄間彫刻「天狗と牛若丸」は、伊八の最高傑作の一つといわれます。

現在の本堂が再建されたのは、寛政9年(1797)、初代波の伊八こと「武志伊八郎信由」が45歳のときでした。

伊八は本堂再建当時、約10年もの期間、飯縄寺に滞在し、総合的に再建に関わったとされています。

その間に伊八が制作した作品の数々と、飯縄寺の見どころを併せてご紹介します。

仁王門(市指定文化財)

画像2

横に広がる茅葺屋根が美しい「仁王門」は、寺内で一番古い建物です。

平成23年に400年ぶりの大改修が行われました。

蟇股には波乗りしている天狗様が彫られていて、天狗の寺と呼ばれる特色が表れています。

本堂(県指定有形文化財)

画像3

本堂には、欄間に「天狗と牛若丸」「波に飛龍」、向拝に「龍」の彫刻があります。

画像4

伊八の作品は、波以外にも優れたものが数多くありますが、その中でも「龍」の表現は抜群だといわれています。

波の伊八 「天狗と牛若丸」

画像5

本堂の欄間彫刻、伊八の「天狗と牛若丸」は、高さ1メートル、長さ4メートルにもおよぶ分厚いケヤキの一枚板に彫られた大作。

実物の彫刻は、言葉を失う圧倒的迫力にあふれていました。

奥行や膨らみがあって、板の厚みが何倍にも感じられる。平面から生み出されたものとは思えないリアルな陰影と遠近感。

伊八が膨大な時間を注ぎ、技術を駆使して創り上げたことが伝わってくるようです。

画像6
画像7

天狗と牛若丸の表情にも、ぜひ注目していただきたい。
見る角度を変えると顔つきが変わる天狗の表情、今にも二人のやり取りが聞こえてくるかのような空気が感じられます。

画像18

「天狗と牛若丸」は、伊八がこの作品に注いだ魂のようなものを感じる作品でした。

波の伊八「波と飛龍」

画像9

「天狗と牛若丸」の左右二面には、伊八の「波と飛龍」の彫刻があります。

画像10

うねる波も飛龍も、勇ましさと動きが臨場感たっぷりに表現されています。
木目の細部まで計算され尽くしたような精密さや、いきいきとした龍の表情も見逃せません。

伊八の最高傑作といわれる欄間作品、ぜひ実物をご覧になり、伊八の世界をご堪能ください。

三代目 堤等琳「天井画 墨絵 龍」

画像11

三代目 堤等琳(つつみとうりん)の「天井画墨絵 龍」は、銘に「秋月等琳筆」雪舟の落款があります。
堤等琳は、葛飾北斎の師として江戸時代後期に活躍した絵師ですが、現存する作品が少なく、飯縄寺の本堂大修理で確認され、大発見となりました。

画像12

天井画には文化2年(1805)と記され、その年の本堂落慶式に間に合うように、伊八が等琳を紹介して描いたと伝わっています。

のちに葛飾北斎が描いた有名作品「神奈川沖浪裏」が、伊八の影響を受けたといわれる繋がりを表す大事な証だそうです。

鐘楼(市指定文化財)

画像13

四面に花鳥風月の彫刻が施された「鐘楼」
細部に至るまで彫刻を施す手法は、江戸時代末期の特色が表れています。
平成22年に改修を終え、当時の面影がよみがえりました。
除夜の鐘は一般参拝客も撞くことができるそうですよ。

巨大な賽銭箱

画像14

「江戸講中」と大きく書かれた大きな「賽銭箱」は、約2畳もある大変大きなもの。
鋼板で造られた立派なお賽銭箱からは、当時の隆盛の度合いがよく分かります!

お寺の随所で見られる天狗様

画像15
画像16

伊八が再建に大きく関わった「飯縄寺」には、「牛若丸と天狗」の伝説があります。

“この地には、源義経が京都から奥州に向かう途中に立ち寄ったという話が伝わり残っています。
源義経がまだ牛若丸の頃、京の鞍馬山で大天狗から武術を学んだことは有名ですが、その大天狗から「奥州に向かうなら、わしの知り合いのいる上総の国の飯縄寺へ訪ねるが良い。」と言われ、伊豆から舟で当地に着いたそうです。”(飯縄寺案内文より)

伊八壮年期の最高傑作といわれる「天狗と牛若丸」は、この伝説をもとに彫られていたのですね。

画像17

「飯縄寺」は静かな場所にあり、風情あふれるお寺です。
江戸時代に造られた建造物や、初代波の伊八作品をはじめとする芸術作品の数々が、境内には点在します。

ぜひ足を運んで隅々までご覧になり、お寺に息づく歴史を感じてみてください。

画像18

いすみ市には他にも伊八の作品を見られるお寺があります。
ご参拝と併せて伊八めぐりを楽しんでみませんか。

一見の価値あり!と、うなずける作品に出会えるのではないでしょうか。


※本記事は、撮影許可をいただき掲載しております。



いすみ市に現存する波の伊八「武志伊八郎信由」主な作品
・行元寺 欄間彫刻「波に宝珠」
・飯縄寺 欄間彫刻「天狗と牛若丸」「波と飛龍」 
     向拝彫刻「龍」
・長福寺 欄間彫刻「龍、麒麟」
・光福寺 向拝彫刻「龍」


【飯縄寺】
〒299-4503 いすみ市岬町和泉2935-1

拝観料 300円

【飯縄寺(いづなでら)】 いすみ市, 名所・史跡・虹色こまちnijikoma.com