館山移住ストーリー――コロナがもたらした“働き方改革”と新しい生き方

目次
- コロナを機に見えた“リモートワーク”という選択
- 「内見もせずに決断」――それほどの魅力を感じた“海辺”と“適度な距離感”
- 移住による生活コストとライフスタイルの変化
- 仕事の不安と“移住支援団体”とのやりとり
- AWAWA! FOOD(アワワフード)誕生秘話――地域の魅力を全国、そして世界へ
- AWAWA! FOODが目指す“ストーリーを売る”通販サイト
- 環境問題への意識――“魚が獲れなくなる未来”に備える一歩
- 2027年には“フードブリッジアワ”で海外展開も視野に
- 目指すは“館山で1000人の雇用創出”――大きな夢が地域を変える
- “まずは移住してみる”という選択のすすめ
- 館山だからこそ実現する“新しい働き方と暮らし方”
- 【地域活性化への貢献】“安房地域”を元気にする通販事業
- 【おわりに】“ここにしかない幸せ”を求めるなら、館山という選択を
コロナを機に見えた“リモートワーク”という選択
「2020年4月、コロナがきっかけで会社がリモートワークに切り替わりました」。
そう語るのは、都内在住だった泉さん。彼が勤める会社は、コロナウイルス感染拡大を受けて早い段階でテレワーク体制を整え、社員がオフィスに出社しなくても仕事ができるよう環境を急ピッチで整備したといいます。
泉さん:「自宅で仕事をすることが当たり前になった途端、“それならもっと開放的な場所で暮らしたい”と思うようになりました。ずっと狭いマンションの一室にこもって作業するのは、どうにも息が詰まる。広い空や自然を見ながら働けたらどんなにいいだろう……と漠然と考え始めたんです。」
コロナ禍という未曽有の出来事は、多くの人々にとって生活様式の大転換をもたらしました。通勤がなくなり、オンライン会議やチャットツールが当たり前になる。その流れの中で、「都心に住み続ける必要があるのか?」と疑問を持った人は決して少なくないはずです。泉さんもまた、その一人でした。
移住候補地は“海がある場所”?――熱海・栃木・湘南・木更津・袖ヶ浦……そして館山へ
「リモートで働けるなら、都心のマンションじゃなくてもいいかも」と考え始めた泉さんは、関東近郊の“住む場所”を具体的に検討し始めました。最初は熱海や栃木、湘南など、人気のリゾート地やアクセスの良い地方都市を候補にしていたそうです。
泉さん:「ただ、いろんな不動産サイトを見ているうちに、なかなか自分が理想とする物件がないんです。
熱海や栃木は物件が古かったり、湘南は家賃が都内とほとんど変わらないレベルで高かったり。木更津や袖ヶ浦も魅力的だったんですが、思ったより都会的で、私が求める‘伸び伸びした感覚’とは少し違うと感じました。」
そんな中で最終的に候補として浮上したのが“館山”。
大学時代に何度か訪れたことがあり、それなりに土地勘があったうえ、千葉県南部とはいえ東京湾アクアラインを使えば都心へも比較的出やすいという安心感もあったといいます。
さらに移住の条件として泉さんが強く希望したのが「宅配ボックス付き物件」でした。意外かもしれませんが、地方の物件は宅配ボックスが完備されていないケースが多く、それが決め手の一つになったというのです。
泉さん:「リモートワークになると自宅にずっといるといっても、日中は会議に集中していたり、プライベートの外出など、在宅時に荷物を受け取れないケースも多いんですよ。だから宅配ボックスはマストだなと。ただ地方の物件は築年数が古いものが多いせいか、なかなかそういう設備が見つからなくて(笑)。
結果的に、館山の物件が条件的にピッタリだったんです。内見もせずに決めましたね。」
「内見もせずに決断」――それほどの魅力を感じた“海辺”と“適度な距離感”
大学時代に何度か訪れたとはいえ、内見もせずに引っ越しを決意するのは相当な大胆さを感じます。
それほどまでに泉さんの心をつかんだのは、やはり館山独特の「海辺の空気感」と「アクセスのしやすさ」だったそうです。
泉さん:「やっぱり海辺の街に住みたいという気持ちは強かったですね。アクアラインを使えば、都内に行くこともそこまで苦にならない。木更津や袖ヶ浦も検討しましたが、海岸や砂浜が身近にないとやっぱり雰囲気が違うんです。砂浜ってなんとも言えない解放感があるんですよ。」
コロナ禍によって「一日に何時間もかけて通勤する」という常識が崩れた今、「そこまでしょっちゅう都心に行かなくてもいいや」という意識変化は大きいのかもしれません。月に数回、どうしても都内で打ち合わせが必要なときには、車でも電車でも数時間で行ける距離。その絶妙な“近さ”と“遠さ”のバランスが館山にはあるのです。
移住による生活コストとライフスタイルの変化
実際に館山へ移住し、泉さんの生活はどのように変わったのでしょうか。もっとも大きな点としては、生活コストが下がったというメリットがあるそうです。
泉さん:「家賃は都内より安くなりましたし、部屋の面積も広くなって快適です。もちろん多少の不便はありますが、イオン、スタバ、ワークマンなど主要な店舗は館山市内にひと通りそろっています。
Uber Eatsがないことくらいが若干の不満でしょうか(笑)。でもそのおかげで、外に出て地元の飲食店を探すようになったのは結果的によかったですね。南房総産の食材を使った自炊の習慣もつきました。
また、館山市は山がそこまで高くないため、平野部からでも空が広く大きく見え、開放感を味わえるそうです。お遍路コースもあり、トレイルランニングやハイキングにも適しているため、都心にはない自然を満喫しやすい環境です。
泉さん:「クマが出る心配もないので、自然を楽しむにはちょうどいいバランスなんですよね。それでいて海にも行ける。走ったり、散歩したり、とにかく身体を動かすのが気持ちいい街です。」

仕事の不安と“移住支援団体”とのやりとり
とはいえ、地方への移住を検討するにあたって誰もが抱く不安のひとつが「仕事はどうするのか」ということ。泉さんはリモートワークができる仕事を都内ですでにしていたため、大きな問題はなかったといいます。しかし、もし新たに館山市やその周辺エリアで仕事を見つけようとする場合はどうでしょうか?
泉さん:「移住支援団体の方に、お話を聞いたときも“都内ほど求人は多くない”と言われました。特に専門職やIT系だと、なかなか難しい面はあるかもしれません。ただ逆にいえば、自分で起業したり館山の資源を活かしたビジネスを始める人も多いんです。実際、地産地消の飲食店、空き家再生プロジェクトなど、面白い事業をしている方が本当にたくさんいます。移住前はそんなに想像していなかったのですが、いい意味でギャップがありましたね。」
ここでいう“館山の資源”とは、海産物や農産物などの一次産業はもちろん、空き家や豊かな自然環境、あるいは地域コミュニティそのもの。大企業が乱立する都会と違い、“自分で何かを始められる余白”が地方には存在していると泉さんは感じています。
人とのつながりが広がる――“SEADAYS”を始めとする、地元の方々がもたらしてくれた新たな出会い
移住後、泉さんは館山市にあるアウトドアフィットネスクラブ「SEADAYS」に通い始めました。そこで地元の人や、同じく移住してきたばかりの仲間と知り合う機会が増えたそうです。更には、行きつけのリラクゼーションサロンのオーナーさんに千葉中小企業家同友会なるものに誘われ、それが後に大きなビジネス展開へと繋がります。
泉さん:「都内の会社で新規事業を立ち上げる仕事をしているという話をしていたら、“千葉県中小企業家同友会”というビジネスコミュニティで紹介したい人がいると言われ、そこで株式会社まるいの鈴木社長と出会いました。当初はサイトの更新をするスタッフさんを探しているという話と聞いていたのですが、実際にお話ししてみると、新たな事業に関する構想があって。それが面白そうだったので意気投合しましたね。」
このときはあくまで“新規事業のアイデア交換”程度で、すぐに形になるわけではなかったといいます。そこから1年半ほどかけて館山の人々や生産者、飲食店などをめぐり、情報を収集し、構想を具体化。
最終的に“通販サイトを立ち上げよう!”という結論に至りました。
AWAWA! FOOD(アワワフード)誕生秘話――地域の魅力を全国、そして世界へ
ーー 1年半をかけて深めた“館山”の資源と可能性
AWAWA! FOODは、「地元の資源を活かして通販事業をしよう」というアイデアがベースになっています。しかし、ただ“地方の特産品を売る”というだけではありません。
泉さんは約1年半の間に、実際に300店舗近くもの飲食店や生産者を訪れ、館山市や安房地域全体の可能性をじっくりと探りました。
泉さん:「館山の近くにある南房総市の和田町は鯨が有名らしく、それをはじめとした海産物や農産物、加工品などが多彩です。はばのりも美味しいですし、最近は千葉でもフグがよく獲れるそうで、これからフグが熱いかもしれない(笑)。それからパン屋さんがすごく個性的で、中には小麦を自家栽培しているところもあるんです。そういったストーリーをじっくり聞いて回るうちに、この魅力を全国に届けられたら面白いだろうなと思いました。」
なかでも衝撃を受けたのが、南房総を中心に毎年季節限定で開催されている「生シェイク祭り」だそうです。館山市にある須藤牧場の専用アイスを使って、いろんなお店がそのお店の個性を活かして作る生シェイクはどれも未体験の味。この祭りをきっかけに、館山パイオニアファームの絶品いちじくや、5代目吉田米屋の砂糖不使用で自然の甘みが最高の甘酒などと出会ったそうです。こうした“地元の名店”や“熱い想いを持った生産者”を発掘するたびに、泉さんの“館山愛”はどんどん高まり、それが「AWAWA! FOOD」の原動力になっているのです。
AWAWA! FOODが目指す“ストーリーを売る”通販サイト
「AWAWA! FOOD」という名称は、「安房(あわ)地域から驚きを世界へ」という意図も込められているといいます。泉さんと鈴木社長は、地元の特産品を単に並べて販売するのではなく、“その背景にあるストーリーや作り手の人柄”をしっかり伝えることが大事だと考えました。
泉さん:「いま日本の通販サイトでは、すでに全国各地の特産品を取り扱うサービスが溢れています。でもそこで『ここの生産者はどんな想いや工夫をして作っているの?』という情報が十分に伝わっていないケースが多いな、と感じていて。
例えばトマトを通販で買うとしたら、おいしそうなトマトを作る生産者さんの情報はネット上でたくさん出てきます。じゃあ、どの生産者さんから買うといいのか?となったら、ただ安さだけ求めるならスーパーで買うでしょう。そうじゃなくてより高品質なトマトを求めたら、それがどれだけすごいトマトで、どんな人が作ったのかといったストーリーの有無が判断の決め手になってくると思います。それは何も新しい考えでも特別なことでもなく、ECで見た目だけでは差別化が難しい商品を販売するには基本的な考えとしてやるべきだと考えています。
ストーリー作りは手間もかかることから、そう簡単に運用はできません。ですが、今は生成AIもあり、2025年はAIエージェント元年とも言われますし、ますますコンテンツは作りやすい環境が整ってくるんだと思っています。今はまだ少しずつですが、そのようなテクノロジーを徹底活用してエンタメ要素を強化していきたいと思っています。
あとは、たとえば独身世帯やDINKsが増えている現代では、『最小の注文単位数が多すぎる』という問題がありますよね。ちょっと魚がほしいけど、大量のBOXでしか販売していないとか。少量からでも手軽に試せて、なおかつ“作り手の熱量”を感じられるような仕組みがあったら、もっと興味を持ってもらえるはずなんです。生産者ごとに送料がかかってしまう問題もあったりするので、そこもAWAWA! FOODで解消していくことが狙いとしてあります。」
また、泉さん自身が“移住者”という立場だからこそ、都会に住んでいる人たちのライフスタイルを具体的にイメージしながら商品構成やプロモーションを考えられるのも、AWAWA! FOODの強みだと語ります。「たくさんの量を買わなくてもいい」「無理なく、負担なく、しかも作り手のストーリーを楽しめる」通販サイトが、今後さらに求められていくだろうと予測しているのです。
環境問題への意識――“魚が獲れなくなる未来”に備える一歩
AWAWA! FOODの立ち上げには、環境面での問題意識も含まれているといいます。たとえば、気候変動によって「将来的には魚が獲れなくなるのでは?」という危機感は、漁業の盛んな館山でも他人事ではありません。
泉さん:「館山に移住してから知ったことで、まだ勉強中ですが、海に囲まれた南房総でもいつまでも漁業が安泰とは言えないということに驚きました。漁師さん不足、気候変動、外国のバイヤーが高値で日本の魚を買っていってしまう…等色んな要因があるようです。素人の自分が何かここでできるのかというと、無力すぎますが、魚もBOX売りじゃなくて、必要な分だけ1尾単位で買えるようにするとか、手間のかかる魚の調理を無くす加工品を企画するとか、小さなことから始めて、もっと問題の解像度を上げていきたいと思っています。」
環境意識の高まりと、新型コロナによる生活様式の変化が相まって、“大きな経済規模がある都会”から“自分らしく暮らし、自分たちでつくり出す地方”へ目を向ける人が増えています。AWAWA! FOODは、まさにその動きの中で生まれた新しいチャレンジの一つだといえるでしょう。
2027年には“フードブリッジアワ”で海外展開も視野に
泉さんが描くビジョンは、国内の通販にとどまりません。彼が出会った株式会社まるいの鈴木社長は、すでに海外展開にも力を入れている人物。そこでAWAWA! FOODも、将来的に海外に向けて日本の食品を発信する構想を持っています。目標は2027年までに“フードブリッジアワ”として海外にも進出し、日本の食文化や地域資源の魅力を世界へ届けることです。
泉さん:「いまはまだテスト的に通販事業を始める段階ですが、ゆくゆくは海外にも販路を広げたいと思っています。海外の人にも“館山ってこんなに面白い食文化があるんだ”“日本の地方にはこういう魅力があるんだ”ということを知ってほしいですし、日本の食品の価値向上にもつながれば嬉しいですね。インバウンドの行き先として館山を選択する人は多くはない印象なので、選んでいただくためのきっかけとしても、ストーリーを伝える動画の編集にはこだわっていくつもりです」。
目指すは“館山で1000人の雇用創出”――大きな夢が地域を変える
泉さんには、もうひとつ大きな夢があります。それは「館山で1000人の雇用を生み出す」というもの。館山市の人口は約4万7千人ですから、1000人という数字はかなり大胆な目標です。しかし、高齢化が進む地方の現状を変えるには、思い切ったビジョンが必要だといいます。
泉さん:「館山に限った話ではありませんが、高校卒業後や大学卒業後に、ほとんどの若者が都市部に流出してしまう現実があります。地元に残っても仕事の選択肢が少ない……という理由ですね。もしAWAWA! FOODが軌道に乗り、新しい事業が増えていけば、若者たちが館山で働きたいと思うきっかけになるかもしれない。移住者だけでなくUターン、Iターンを検討している人にも、働く場として魅力的な地域になれる可能性は大いにあるはずです。」
最終的には一次生産者として、生産から販売までを一貫して行う体制にも地域と協力しながら挑戦したいという泉さん。そのためには人材が不可欠であり、新しい事業が増えれば働き手を増やすこともできる。互いに好循環を生み出せる仕組みを築くのが目標だといいます。
“まずは移住してみる”という選択のすすめ
これまでご紹介してきた泉さんのストーリーからは、「地方移住」という言葉に対する固定観念が大きく変わる印象を受けます。館山にはイオンもスタバもあり、ワークマンもあれば古くから愛される地元の名店もある。自然豊かな田舎という一面と、最低限の都市機能が両立している、いわば“ちょうどいい田舎”といえるかもしれません。
泉さん:「“館山に移住すると本当に仕事があるの?”と思う方も多いかもしれませんが、実は人とのつながりがすぐに生まれる街なので、意外なところで面白いビジネスやプロジェクトに参加できることが多いんです。僕も移住者としてみなさんに助けられましたし、その恩恵を今度は新しく移住してくる人たちに還元していきたいと思っています。」
また、AWAWA! FOODとしては“館山ならではの食材”や“作り手の想い”を全国へ、そして世界へ伝えていくことがミッションです。通販事業を一つのきっかけに、生産者や地元事業者の方々の魅力、そして地方の持つ可能性を最大限に引き出す。そんなビジョンを現実のものとするためにも、国や自治体、金融機関との連携や、IT・物流といった専門領域のパートナーシップが鍵になるといいます。
「環境問題で魚が獲れなくなる未来をどう防ぐか」「若者が地域に戻ってくる仕組みをどう作るか」など、解決すべき課題は山積みですが、“逆にそれは大きなチャンス”だと泉さんは捉えています。空き家活用による街作りや地産地消、スタートアップなど、自分の個性を活かしてビジネスを興せる余地がまだまだ残っているというわけです。
館山だからこそ実現する“新しい働き方と暮らし方”
海と山、自然の恵みが身近にある暮らし
- 館山は海岸線が美しく、砂浜が身近にあり、四季折々の景色が楽しめる環境です。
- 山も高くなくクマが出る心配が少ないため、トレイルランニングやハイキングが安心して楽しめます。
- 空が広く感じられる開放的な景観は、日々のストレスを軽減してくれます。
都心へのアクセスと買い物の利便性
- アクアライン経由で都内へ出ることが可能。週に数回の出勤や用事があっても苦になりません。
- イオンやスタバ、ワークマンなど主要チェーンが揃い、生活必需品の買い物にも困らない環境です。
- Uber Eatsはないものの、代わりに地元グルメを“探検”できる楽しさがあります。
暖かい人間関係とビジネスチャンス
- 親身になってくれる移住支援団体があるなど、移住者を支援する体制が整いつつあります。
- 地域コミュニティがコンパクトな分、人とのつながりが生まれやすく、新規事業やコラボレーションのアイデアが湧きやすい。
- 街作りや地産地消、ITサービスなど、多様な分野で起業する余地が十分に残っています。
生活コストの抑制と豊かな暮らし
- 都内と比べて家賃や生活費が抑えられ、比較的広い住まいを確保できる可能性が高い。
- リモートワークを活用すれば、都心に勤務しながら館山での生活をエンジョイできる“二拠点生活”も視野に入ります。
【地域活性化への貢献】“安房地域”を元気にする通販事業
AWAWA! FOODが目指すのは、単なる“もの売り”ではありません。通販事業を通じて、地元生産者や事業者の認知度向上や売上拡大に貢献し、地域の経済循環をさらに活性化させること。加えて、地域外の人々に“館山の知られざる魅力”を発信し、新しいファンや移住希望者を呼び込む可能性を広げることでもあります。
泉さん:「地元の方々と話をしていると、“安房地域を盛り上げたいけど、どうしたらいいか分からない”という声も聞きます。そもそも盛り上げるって何だ?ゴールはどういう状態なんだ?という疑問が出てきますが、1つの共通認識を持とうとするのも、立場が異なる人が多すぎてなかなか現実的では無さそうに思えます。
そこに時間をかけることより、輝くものを見つけた移住者が地域の方々と連携して、新しい機会を形にしていく行動の数を増やして、学んで、それをシェアしていくことが大事なのかなと思っています。
僕たちの場合、通販を皮切りに新たな事業を作っていって、館山ではこんなことができるんだということをアクションで示して、“館山でこんなことやってみたい”と興味を持ってもらうきっかけを作りたい。それがうまくいくかはわかりませんが、失敗したとしても、それは館山のナレッジにして、次に活かせばいいのかなと。まずは動く人を増やすということで。」
もともとは“海辺で伸び伸び働きたい”という個人的な想いから始まった移住が、今では“地域を活性化する大きなムーブメント”へと繋がりつつあります。
【おわりに】“ここにしかない幸せ”を求めるなら、館山という選択を
コロナ禍で始まったリモートワークの流れは、その後も多くの企業や働き手に影響を与え続けています。オフィスに縛られず、場所を自由に選べる働き方が広まる中、泉さんのように“伸び伸びとした環境”を求めて地方への移住を果たす人が増えるのも自然な流れでしょう。
館山という地域は、海と山に恵まれ、都市機能がコンパクトにまとまった“ちょうどいい”街。しかも人の繋がりがあたたかく、新しいことに挑戦しようとする人を歓迎する風土があるようです。もしあなたが“移住して新しい暮らしを始めたい”“地域の資源を活かしてビジネスをしたい”と考えているなら、この“安房地域”を一度訪れてみるのもきっと面白いはずです。
そして、泉さんが手がけるAWAWA! FOOD(アワワフード)は、そんな館山・安房地域の魅力を“食”を通じて全国に、いずれは世界に向けて発信しようとしています。ただ商品を売るだけでなく、“誰がどんな想いで作っているのか”を伝え、消費者と生産者の距離をグッと近づける。そうした新たな通販サービスの姿は、きっと私たちのライフスタイルをより豊かに彩るはずです。
> 泉さん:「。南房総の面白さを伝えずにはいられない。世に知られないのはもったいない。本当にいいものは誰かに伝えたいというシンプルな気持ちでAWAWA! FOODを立ち上げました。ぜひ館山に興味を持ったら、一度遊びにきてみてください。美味しいものを食べに行くだけでも、新しい出会いがあるかもしれません。」
ウーバーイーツこそないけれど、それを補って余りある魅力が詰まった街――館山。広い空と海、そして何より“人のあたたかさ”が、あなたの人生をきっと豊かにしてくれることでしょう。移住も、ビジネスも、あるいは週末のショートトリップでも構いません。あなたの次の目的地として、“館山”を選択肢に加えてみませんか?
【取材・執筆後記】
- 館山の魅力を再確認
実際に足を運んでみると、“海辺の暮らし”というのは観光だけでは分からない豊かさがあると感じました。海を眺めながら仕事をしたり、地元の人との会話が自然と弾んだりする体験は、“都会の便利さ”だけでは得られないものです。
- AWAWA! FOODの可能性
生産者や飲食店の方々のストーリーを聴いて回り、それを消費者に丁寧に伝えるだけでも十分価値があるはず。クラウドファンディングで商品開発を手伝うプロジェクトが生まれたり、イベント連動型の企画ができたり……と展開は無限大に広がりそうでした。
- 移住のハードルとチャンス
移住には実際に住居を探したり、市役所での手続きなど手間もかかりますが、それ以上に得られる人脈や新鮮な発想、大自然の恩恵は計り知れません。特にリモートワークが可能な人にとって、地域への“潜在的なチャンス”はかなり大きいと言えるでしょう。
これを読んで、「自分もいつか地方移住してみたい」と思った方がいたら、ぜひ情報収集から始めてみてください。館山はもちろん、ほかの地域にも面白い取り組みや未知のビジネスチャンスが隠れているかもしれません。そして、「AWAWA! FOOD」のように、地域資源を活かしつつ新しい仕組みをつくろうとする人や企業が増えれば増えるほど、日本の地方は元気になっていくはずです。
ぜひ一度、館山の地へ足を運び、AWAWA! FOODの取り組みを肌で感じてみてください。海の香りと、人の温もりが詰まったその体験は、きっとあなたの常識を変えるはずです。
本記事が、みなさんと館山、そしてAWAWA! FOODを結びつけるきっかけになれば幸いです。
〈執筆・編集=虹色こまち編集部〉